フィンランドで乳児用液体ミルクを買ってみた時の話

乳児用液体ミルクにはちょっとした思い入れがある。
北海道地震で東京都から支給されたフィンランド製の液体ミルクが「怪しいから」と使われなかったと聞いて、どうにかしないとなと思っていた。
そもそも日本のお母さんは苦労しすぎだ。
何もかもが「こうしなきゃ」と決められていて、そうできないと辛い。ミルクぐらい液体で楽をできたらいいのにと常々思っていた。そこへこのニュース。
確かに災害時の混乱の中で、怪しい外国語が書かれた商品を子供に与えられるかというと、いくら日本語の説明が補足でついていたからって疑問が残る。私だって自分が読めもしない言語、例えば中国語やロシア語などが書かれた食品は予備知識なしに口に入れたくない。
だから、フィンランドでは液体ミルクは普通に使われているよ、という情報を発信したかったのだ。
その前に液体ミルクの販売が解禁になってよかった。本当によかった。

だけどそもそも、私は液体ミルクを日常で使用した事はなかった。
母乳が出ていたので、搾乳して、冷凍保存して、私が家を空けるときはそれを夫が哺乳瓶に入れて温めて飲ませていた。

ちなみに産後初めての一人での外出は息子が1ヶ月半のとき。午後いちから夜の10時ぐらいまで、仕事で出かけた。
その出かける直前に息子が風邪を引いたかも、という気配があって夫が病院に連れて行くトラブルが発生したけれど、それでも出かけた。今思うとちょっと薄情なほどだったかも。まあでも二人いてもできることなんてないし。
事前に哺乳瓶に慣れさせるように練習は念入りにしていたし(これが慣れるまで結構時間がかかった)、多少息子は泣いたようだけど難無く用事を済ませることができた。

次に、初めて夫婦共に息子を預けて出かけたのは息子が3ヶ月になろうというときだった。
子育てに慣れている義弟に、息子とオムツと冷凍母乳と哺乳瓶を託し、観劇のため移動時間含め4時間ほど離れた。このときは義弟の家で面倒を見てもらったのだけど、そこへ息子を連れて行く直前になって夫が持って行く冷凍母乳の数が充分かどうか心配し始め、イラっとしたのを覚えている。その時用意していたのは3回分。4時間であれば一回の授乳で足りるのに、予備とその更に予備でもまだ足りないのではとのたまう。いつも心配性な夫と、楽観的な私。大丈夫だよ、と言っても彼の心配は止まらず、じゃあその辺のスーパーで液体ミルクを買っていけばいいじゃん、と私は言った。
というのも母乳が充分出ているとはいえ、搾乳は楽じゃない。息子が母乳を飲み終わりそれでもまだ出そうだなというとき、寝静まったタイミングを狙って、手もボトルも綺麗に洗い、文字通り乳を搾るのだ。時間も手間もかかる。継ぎ足し冷凍はできないからある程度の量になるまでやめられないし、搾るとさらに出るようになって張るというし、面倒に思うこともそれより寝たいと思うこともあった。その貴重な母乳を、念の為だけでもう一本無駄にしろという。移動中に保冷をしていたとしても、冷凍のまま持ち運んだ母乳を、使わなかったからと言って再度冷凍庫に戻す事はできない。つまり持って行ったら最後、おそらく息子に飲まれずに捨てることになるのだ。
そんな無駄を出すぐらいなら、どのスーパーでも売っている、しかも一本100円もしない液体ミルクを予備に持っていけばいいじゃん、と私は考えた。しかし夫が譲らなかった。
なぜならネウボラの母乳第一教育は妊娠中から、夫にもされているのだ。
妊娠6ヶ月の時に渡された、母乳の大事さが書かれた冊子にはお母さん用とお父さん用があり、栄養面や免疫面の話はもちろん、子供が授乳によって得られる心理面での安心感、また母乳が出ない父親がいかに母親を助けられるかも書かれている。もちろん母乳が出なければ液体ミルクでも粉ミルクでも使うのだろうけど、夫は完全に「洗脳」されていて、母乳が赤ちゃんにとって一番だと思っていた。たぶん今でもそうだと思う。
私ももちろん母乳が一番手軽で簡単だしタダだし、授乳を嫌だと思った事は一度もないけれど、日や週に一回ぐらい他のミルクを飲んだからって息子の健康に害が出るとは思わない。それも我が家の場合は、他人に預けるなんて月に一回もない事だ。なんとなく自分の母乳=体液を他人に託す嫌悪感というか抵抗のようなものもあった。
だけど結局その日はもう一本余分に持って行くことにして、私はその夜、結局使わなかった自分の備蓄母乳を捨てた。

そうして我が家がいよいよ液体ミルクに手を出したのは、息子が4ヶ月のとき。
家族でモルディブに旅行することになり、離れ小島の滞在でスーパーもなさそうだし暑い国だというのもあって、万が一私が下痢になったり病気になったりしたときにどうにかできるよう、常温保存できる液体ミルクを哺乳瓶と共に持って行った。つまり非常用。
結局使う事はなく無事に旅行は済んだのだけれど、その後息子が6ヶ月の時にも、日本に4ヶ月ほど帰国することになり、地震・災害対策として同じ液体ミルクを持って行った。
その液体ミルクの賞味期限がそろそろ切れるというので、せっかく買ったんだし、と日本にいる間に飲ませようとしたのが、息子の液体ミルクデビューである。
ミルクパックの蓋を開けて哺乳瓶に移し、それをレンジで数秒温めるだけ。
だけど離乳食がとっくに始まっていて、私がたまに友人と出かける時なんかは備蓄母乳ではなくごはんを与えられていた息子。哺乳瓶を使うこと自体忘れてしまったのか、嫌がって飲んでくれなかった。
以上が、我が家と液体ミルクの短い付き合いだ。

授乳自体はWHOの推奨通り1歳半か2歳ぐらいまで、せめて就寝時だけでもゆるく続けようと思っていたけど、離乳食をもりもりと食べてくれた息子は1歳の誕生日を過ぎるとパタリと母乳に関心を示さなくなり、苦労することもなく卒乳できた。その頃は毎朝どんぶり一杯のオートミール粥を平らげて更にパンをねだるような食欲ぶりだから、まあそりゃいらんだろうな、と思う。
なので私は液体ミルクを語れるほど母乳にも断乳にも苦労していないので、はっきり言ってちょっと気が引けながらこれを書いている。それでも子育てする上で人並みの葛藤はあったので、忘れないように書き留めておこうというのが本音。

ただもし次に子供を育てるときに液体ミルクを使う機会があったら、私は積極的に取り入れたいと思っている。長男の時は機会がなかっただけで、液体ミルク自体は怪しいものとは思っていない。それは安心のフィンランドブランドだからだ。
日本ではあまり知られていないけれど、フィンランドの食品のクオリティはかなり高い。ヨーロッパの他国のものが安くたくさん出回っている中で、多少高くてもフィンランド製が一番と信頼しているフィンランド人も多い。輸入製品でも品質チェックはかなり厳しくされていると聞く。スウェーデンメーカーの液体ミルクも売られているけれど、少なくとも私は同じぐらい信用できる。
日本では海外製=怪しい、と一括りで偏見を持っている人もまだまだいるけれど、日本人が日本製を信用しているのと同じぐらいフィンランド人はフィンランド製品を信用している。それが、今回の解禁で日本メーカーが液体ミルクを出してくれるっていうんならなおさら。ちょっと試してみていいと思う。
何より液体ミルクは母乳より手軽に常温で持ち運べるのが私には魅力で、温めなくてもあげられるので、たぶん次に子供を育てる時はオムツバッグに一本ぐらいは忍ばせるんじゃないかと思う。それで、夫にはあらかじめ告げずに、家族みんなでふらりと出かけたときに「液体ミルクあるから、じゃ」と言って自分だけ買い物に抜けるとかも悪くないかもしれない。何より困ったときにいつでも液体ミルクを頼れるというのは、母乳がいくら出ていたって大きな心の支えになる。
それぐらい手や気を抜いたって、夫も、誰も文句を言わないだろう。

ちなみにフィンランドにおける乳児用ミルクの割合は9割が液体、1割が粉だそうで、これがお隣の国スウェーデンになると半々に変わるのだそうな。これも面白い。
なのでもしリアルに液体ミルクを使っているフィンランドママの話が聞きたい!とかご要望あればそれもいつかまとめるので教えていただければと思う。

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