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カレ・キュリユー『CirqueVivant!』


 ショーが始まって10分後、観客は普通、何を思うのだろうか。
 それが1時間半、ないし2時間のショーだとして、そこはまだまだ序盤、やっとショーや会場全体の雰囲気に浸り始める、あるいはなかなか集中できなくて現実とステージの世界とを行ったり来たりする、本来そんな段階だと思う。
 私も普段なら開始後10分は、ああそこに持っていくのね、とか、次はこう来るのだろうな、などと全体の構成に頭がいっていて、ショーを俯瞰していることが多い。

 そこへ、このカレ・キュリユー『Cirque Vivant!』。
 始まって10分の段階で、いや、7分の段階で私が思っていたことはずばり、「ああこのショーは数十分後には終わってしまうんだな、嫌だな」という、どうしようもない淋しさだった。
 それから「明日のチケットまだ残ってるかな」であったり、更にショーが進むと「こいつらアホだー」と「こいつら大好き!」に変わっていった。
 もはやこいつら呼ばわり。
 こんな経験をさせてくれたサーカスは、いまだかつてなかった。

 例えば、昨年末で終わってしまったシルクドゥソレイユの『ZED』。
 これは何度も観て愛着もあって、しかも日本初の常設シアターで、ファイナルステージはさすがに終わってしまうことを惜しみながら観てた。
 だけどカレ・キュリユーは初めて観たサーカスだ。
 前知識もほとんど仕入れないまま観に行って、その結果が、「大好き」。
 それを一目ぼれと呼ぶと格好良すぎる。
 一目ぼれは一方的なことが多い。そうではなく、一気に親しくなったような感覚だ。
 観終わったあと、一緒に観賞した友人と感想を話すときも、お互いの顔がほころんでいた。
 「ああいうやつら、身近にいそうだよね」と感想を漏らしたあたり、すっかり仲良くなった気分でいる。

 基本的なことを書こう。
 カレ・キュリユーはベルギー出身のサーカス集団で、4人の男性だけでショーを行っている。
 たった4人なのに、内容はもりだくさん。
 ジャグリング、エアリアルシルク(ティシュー)、ディアボロ、マイム、ポール、ユニサイクル、その他サイクル。
 それからアクロバットに加え、クラウニングとバレエの要素も。
 『Cirque Vivant!』と名付けられた今回のショーの公演時間は1時間半弱と若干短いけれど、これだけの演目数をたった4人でまわすのだから、「え!お前さっきあの演目もやったじゃん、なのにそれもできるの!?」みたいな驚きが随所随所にあった。
 数をこなすだけなら、まあ歳を重ねて経験を積めば誰でもできるけれど、それらのレベルがすべて、とても高いのだから目を瞠った。

 例えば、ジャグリングが一番わかりやすいだろうか。
 大道芸でも観られるこの演目は、もうサーカスに興味のある人間なら観慣れていて、今更ボールを5個だの7個だの回されてもまったく驚かない。ときには、退屈ささえ感じる。
 なぜ退屈なのかって、それはみんなただボールを投げるだけだから。
 もちろん大変そうに投げる人もいる。愛嬌をふりまきながら投げる人もいる。
 しかしほとんどのパフォーマーが、ただ立って、一生懸命にボールを見つめながら、必死に腕を動かしている。
 それに比べて、こいつらのジャグリング。
 ふざけて、ふざけて、適当に、だけど軽やかに、失敗さえ計算に思わせるしなやかさで、ステージ上を滑るように踊りながら、ときには腕を4人で複雑に絡めながら、必死に投げている全世界の芸人たちを笑うかのようにボールと戯れていた。
 そうそう、戯れ。あるいはふざけ。
 それはショー全体に共通していて、それもチャップリン的「ちょっとお茶目な」感じではなく、全力で阿呆をやらかしていた。
 ステージ中に散らばったジャグリングボールを、一人ではっちゃけて踊りまくりながら拾い集めていたところを、戻ってきた仲間に見られてしまい、ふっと気まずくなるとか。
 ただの布をペットのように扱い、優しくなでたり、紐を付けて連れまわし、それと同じ扱いを他人にも強要して、付き合ってくれないと子供みたいにすねるとか。
 そういう、客観的に見ると単なる変な人だけど、意外にこういう奴いそう!いるいる!というアホを、なにげにすごいサーカス技を交えて全力でやってくれるものだから、もう終始笑いっぱなし。
 本当に前情報なく観に行ったし、チラシやプロモ映像を見たときもこんなにも面白いとは思っていなかったので、普通にクールなコンテンポラリーサーカスかなぁと思っていたところへ、この仕打ち。
 こんなサーカス観たことない!こんなに笑ったサーカスもない!
 しかも、また観たい。
 そんなふうに思えるサーカスが、まだまだ世界にはあるというだけで、嬉しくなった。いや、世界は広い!
 そしてあいつらにまた会えるならベルギーまで行ってもいい。うん。

 しかもいい意味で、勉強にもなった。
 正直日本で観られるサーカスは、シルクドゥソレイユか木下・ポップみたいな伝統サーカスか、もしくはたまにやってくるスタイリッシュなコンテンポラリーサーカスか、しかなかった。
 それに加えてサーカスは、格好いいもの、だった。
 実際のアーティストの性格はどうあれ、ちょっとしたおとぼけがショーに組み込まれようとも、最後はばしっと決めて拍手をもらう、それがサーカスのショーであり、ステージ上のサーカスアーティストだった。
 そういう常識や価値観を、見事に打ち砕いてくれたあいつら。小憎いな。しかし打ち砕くにしても、きっと、あっはっはーとか笑いながら、うっかりぶつかって砕いちゃった、みたいにやるんだろうな。
 ああ、また観たい、是非に。
[[みごと]]

2011/12/31: サーカス漬け!

 ずっと更新してなかったのは、書きたいことがたくさんあり過ぎたからです。
 で、年末に落ち着いたらまとめてアップすればいいやー、とか思ってたら、つい先日、母から「ブログ更新しないんですか」とメールが来て、書きづらいことこの上ない。
 何故って遊びまくってたので、最近。

 とりあえず、今年はサーカスを、これでもか、というぐらい観まくりました。
 公演の数でいうと、12ぐらい?
 ・ポップサーカス(静岡)
 ・フランコ・ドラゴーヌ『水舞間』(マカオ)
 ・シルクドゥソレイユ『ZAIA』(マカオ)
 ・シルクドゥソレイユ『KOOZA』(東京)
 ・ニクーリンサーカス(東京)
 ・リトルワールド『空中ワンダーサーカス』(愛知)
 ・モンキーパーク『桃太郎イリュージョン』(愛知)
 ・シルクドゥソレイユ『ZED』(東京)
 ・シルクドゥソレイユ『KOOZA』(大阪)

 と、ここまでは序の口。

 ・沢入サーカス学校公演(群馬/夏)
 ・7Fingers『PSY』(福岡)
 ・Compagnia dei Folli (静岡/大道芸W杯)
 ・空中キャバレー(長野)
 ・沢入サーカス学校公演(群馬/冬)

 と、日本を行ったり来たり、大遠征。
 夏の終わりから、毎月のようにどこかしら遠征してました。

 で、桃太郎イリュージョンや空中キャバレーも数にいれるならば、たぶん以下も仲間に入ります。
 ・シルヴプレ『エトランゼとエトランゼール』(パントマイム)
 ・山本光洋『老人と海』(パントマイム)
 ・マジックバーサプライズ企画『マジカライブ』(イリュージョン・手妻)
 ・見世物小屋(花園神社)

 あ、数えたら12じゃ足りなかった…。
 あと、観た回数で言うと、諸事情で何回も何回も観たショーもあるので、正直数えきれない。

 いや、仕事です。仕事。全部。まじで。
 証拠に、サーカス関係の講演会とかにも真面目に出て、お勉強してました。
 本当にサーカスにどっぷり浸かりきった、幸せな一年でした。

 その幸せな一年を締めくくったのは、シルクドゥソレイユ『ZED』の千秋楽。
 実は千秋楽の数日前、色々な方のお力添えにより、ZEDのバックステージ見学をさせていただき、それはそれはもう、短いながらも大変満足できる時間を過ごさせていただきました。
 そしてのぞんだ千秋楽。
 本当は長々と感想を書き連ねたいけれど、それは別に項を設けるとしましょう。
 とにかく、素敵なショーでした。
 この日に観て良かった、このお客さんたちと観れて良かった、と思えるような貴重なショーでした。
 本気で再演を信じてます。別の場所でも、どこでも。


 サーカスつながりで来年のことを思うと、まず2月の頭にカレ・キュリユーがベルギーからやってきます。これは要注目!
 あとは個人的に、またちょっと遠征に行ってくる予定でもいます。
 
 やばい、サーカスのことしか書いてない。
 いや、仕事のことにも触れておくと、こちらも2月の頭ごろ、短いお話を、皆様のお手元に届けられる予定です。
 また詳細決まりましたら、ここで宣伝しますんで。
 スローペースですみません。
 決して原稿そっちのけで遊んでるわけではなく!
 これも次へのインターバルというか、なんというか、あれです、あれ…!

 まあ、そんな感じで。よいお年を。
 
[[みごと]]
 シルクドゥソレイユの『ZED』が今年いっぱいで終了。
 そのニュースを聞いても大きな驚きはなく、やっぱりな…、というのが正直な感想でした。
 だって、客少ないし。
 演目やシアターは魅力的だけど、何度も行くには高いし、都内から遠いし、仕事帰りに寄れる時間にやってない。
 ビジネスとしてうまくいかなければ、それは仕方のないこと。

 と、思っていたのになぁ。

 前々から、そろそろ観に行こうかな、と思いつつも地震で中断したり、それでなくても今年の上半期は他のサーカスにかかりっきりになっていたり、で機会を逃していたら、サーカスに詳しい方から「かなり良くなっていた」と聞いて、やっと先日観に行ってきました。
 そうしたらば。
 ショーが始まった瞬間、くそう、こんな良質なショーが終わるなんて、この空間が『ZED』以外のものに使われるなんて、と、悔しい限り。
 前言撤回。
 これが終わるのが「仕方ない」なんて、そんな言葉じゃ片付けられない。

 zedプログラム

※プログラム。下が2008年トライアウトのときの、上が2011年本公演の。サイズだけじゃなく内容も違う。


 そもそも、私が一番最初に観たシルクドゥソレイユのショーは『アレグリア2』でした。
 そのときは貧乏学生で、卒論のためにサーカスを観なきゃいけなくて、サーカス貧乏に陥ってた中、なんとかチケット代を捻出して行ったショー。
 それが、あまり私には合わなかったのです。
 そのひと月ほど前に、日本では無名の、シンプルなサーカスを観て気に入ってしまったこともあって、アレグリア2の色彩感がまず駄目で。
 他にも色々理由はあったけれど、「高いチケット代出して観るほどじゃないな」と貧乏学生は早々にシルクドゥソレイユから離れてしまいました。

 だけどその後、卒論が終わってからもサーカスのことを調べていると、近代サーカス史とシルクドゥソレイユの関係はどうしても切り離せませんでした。
 そんな矢先に常設シアターのニュース。
 『ドラリオン』は見送ったけれど、常設ならば行くしかないな、と変な使命感を持って『ZED』のトライアウト公演に臨みました。
 そして、やられた。
 初めて観たときの感想は上のリンクの通りですが、シルクドゥソレイユもやるじゃねぇか、という偉そうな感想ともうひとつ、「あ、私サーカス好きだったんだ…」と大変遅ればせながら、そのとき初めて自覚したのをよく覚えています。
 それまでは卒論目当てだとか研究対象だとか、まあ一種のツンデレで言い続けてたんですが、初めて認められたというか。
 そういう意味で、私の中で『ZED』はなかなか大きな存在だったわけですよ。
 第一印象だけじゃなく、何回かリピートしてもやっぱり好きだと思える世界観も、観るたびに変わる印象も面白かったし。
 初めて『ZED』を観てから、シルクドゥソレイユを含め、各地でいろいろなサーカスを観たけれど、それでも飽きずにまた『ZED』を観に行っていたのはそれだけ魅力があったから。
 何よりも都内から遠いとはいえ、いつでも気が向いたときにサーカスが観られる場所があるというのは、すべてのサーカスファンにとって、とても貴重なことだと思うのです。

 それがなくなるなんてなぁ…。
 と、ぐだぐだした前置きはそろそろやめて、さて、どうだったのか。

 噂通り、よくなっていました。
 私が最後に観たのが、確か去年の9月下旬。
 進化し続けるから当たり前だろう、と片づけるのは簡単だけど、ハイワイヤー(綱渡り)なんか明らかに技がグレードアップしてるし。
 震災以降、新しく加えられたエアーマットの出現方法も、なかなかお見事。
 フライングトラピス(空中ブランコ)も、今まで何回観てもこれだけは好きになれず退屈に感じていたけれど、なんだかとてもパワフルになっている。
 空中ブランコというと、中原中也が「ゆあーん、ゆよーん」と表現したように、しなやかな演出が一般的であるけれども、私はそれがあまり好きじゃない。
 『Kooza』のソロトラピスぐらいに猛々しくやってくれる方がいい。
 でも今回観た『ZED』のトラピスはそのどちらとも違っていて、伸びやかなのに空中で一瞬静止して見せる、遊び心のような自由さが随所にちりばめられていて、とてもメリハリが効いていた。
 爽快感増量、って感じ。
 あとは、順番は前後するけどハンドトゥハンド。
 最初観たときはこれもいまいち好きになれなかったけれど、何回目だったか、一度かなり前の方の席で観たらこの演目の美しさにやられ、それ以来目が離せない。
 曲も、演技も本当に美しい。
 こういう静かなものをやって観客を引き込むことができるショーってそうそうない。

 曲と言えば、私の大好きだった(CDも買った)声の男性シンガーが代わっていて、それは少し残念ではあったけれど、『ZED』の曲にはむしろ新しい人の方がより太い声の方が合うのかも、と思った。
 そうやって、新しいこともきちんと説得力を持って取り入れ、進化していくのが常設シアターのいいところ。
 …ああ、だというのに、本当に残念。

 とりあえず、たぶん終わるまでに最低あと一回は観に行く予定。
 しかし観るたびに、このまま終わるなんて、というどうしようもない敗北感を抱きそうだ。
 当事者でもないのに、やっぱり悔しい。
[[みごと]]
 海外にはサーカス学校というものがあります。
 というと驚く人が多いけれど、更に「日本にもありますよ」と言って驚かれるのももう慣れた。
 あるんです、サーカス学校。群馬の山奥に。

 詳しい説明は、関係者でもない私からするのは憚られるので省略。
 私はたまたま友人がそこを出ていたのと、仕事上で、というかサーカスライフ上でお世話になっている方がそこの関係者で、それで学校の存在だけはずっと知ってた。
 5年前ぐらい前に両国の「シアターX」でサーカス学校の生徒が公演をしたときに観に行ったこともある。
 けれど、群馬の沢入(そうり)にあるサーカス学校にだけは、なんとなく機会を逃して行けていなかった。
 というわけで、今回が初。
 「特急りょうもう」と「わたらせ渓谷鉄道」というマニアックな電車を乗り継いで行って来た。
 前日まではひとりで行くつもりだったけど、それだと当日の朝になって「眠いからやめた」とかなりそうなので、直前にモノ好きな友人を誘って、電車でごとごと二人旅。

わたらせ渓谷鉄道のお顔。

 ※わたらせ渓谷鉄道。鉄道マニアには有名らしい。


渡良瀬の車窓から。

 ※わたらせの車窓から。なんだかなつやすみって感じの風景でした。


沢入駅。駅舎と鉄道、それからアジサイ。

 ※沢入駅。あじさいが綺麗。


 無人の沢入駅を降りると、車が停まっていて「サーカス学校へ行く方はどうぞ」とご婦人が声をかけてくれた。
 せっかくのご厚意だったけれど、山小屋風の駅舎や、渓谷や山しかない大自然いっぱいの風景にヴァケーション気分になっていた私たちは、風景を楽しみつつゆっくり歩いて行くことにした。
 駅からは徒歩八分、電車の本数を考えなければそんなに不便なところでもないのが救い。
沢入駅近くの渡良瀬川。

 ※飛び込みたくなるような澄んだ渡良瀬川。


 もうここまでの写真をざっと見ると、避暑してきました、楽しかったです。みたいな記事になりそうだけど、違うんです。
 サーカスを観に行ってきたのです。
 そう、名前こそ「発表会」ではあるけれど、私の方は完全に他のサーカスを観るのと変わらない姿勢でいました。
 面白いサーカスを見せてね、って。
 偉そうかもしれないけれど、これからプロになろうという人たちのショーを観るのに、「まだ若いから」とか「ガクセイだから」とかいう容赦は無用かな、と。

 そんな姿勢で観た肝心のサーカスは、あるストーリーに乗って展開していきます。
 サーカスにさして興味を持っていなかった年頃の女の子が、家族に嫌々付き合って観たショーでサーカスに惹かれてその世界を目指す、という、明快なストーリー。
 それを背景にしながら、生徒がそれぞれの技を見せて行くという構成。

 失礼ながら、ちょっと驚きました。
 前述の通り最近プロのサーカスを観過ぎで自分でも目が肥えたのが分かったし、5年前に観たサーカス学校の公演はさほど目を瞠るようなこともなかったので、容赦はしないと言いつつも、楽しめればいいかな、ぐらいにしか思っていませんでした。
 でもいざ観始めると、結構面白い。
 個人によってばらつきはあるものの、印象に残った演目もいくつかあったし、きちんとショーになってた。
 生徒がショーをしている、のではなくて、サーカスアーティストによるショー。
 全部が全部ではないけれど、きちんとそう見えるシーンがいくつかあって、それだけでもすごいことだと思う。

 実はちょうど一年前、ロンドンのサーカス学校の生徒によるショーを観た。
 条件は今回の沢入サーカス学校の子たちとほぼ同じ。
 2年修了時の記念公演だったから、2年間学んできた子たち、歳の頃は若くて20歳。場所も校内のアトリウム。
 設備や人数、周囲からのバックアップとかそういう点はロンドンの方が勝っていたけれど、ショーの内容は比べても全く遜色ない。
 ロンドンのショーも、「生徒がショーをしている」場面は多くあったし、シュールな演出に負けているシーンもあった。
 それに比べたら沢入の方が明快な分、万人に受け入れられやすい。
 同時に、5年前の沢入サーカス学校の公演と比べて、学校のレベルが上がっているのかな、とも感じられた。

 一番印象に残ったのはコントーション(柔軟技)の女の子。
 実はサーカスの演目の中で一番コントーションが好きになれない私は、特に中国系の、にかっと張りつけたような笑顔のもとでぐねぐねやられる演技が嫌いで、どんなにすごい技でもなかなか素直に拍手できないのだけれど、この子のショーは全く違ってた。
 優雅にゆったりと身体を折って、表情も涼しげ。
 演出の扇子と着物風の衣装がまた生きていて、このプログラムを極めれば充分プロとしてやっていけるのでは、とさえ思った。
 何より演技力が光ってた。
 セリフの言いまわしとかそういうことではなく、指先の見せ方とか、そういうの。
 バレエとかダンスを過去にやっていて、観られることに慣れてるのかな、と思ったほど。

 それから椅子を使った…なんだろう、チェアアクロバット+マイム、みたいな演目。こちらは男性。
 椅子が出て来たから「ああ…またバランシングオンチェア(椅子を積み重ねてく演目)か…」と思ったら、一つの椅子を傾けたり転がしたり、それに乗ってアクロバット。
 椅子と見事に一体化したかと思うと、次の瞬間には椅子をボールみたいにころころと扱って、イリュージョンみたいでもあった。
 観ていて気持ちのいい躍動感が、次もまた観たいと思わせてくれた。

 あとは座布団を使ったジャグリング。これも男性。
 ボールやピンを回す人、それから少し大きな輪なんかを回す人は今はもうどこにでもいる。
 この人の演技を観たとき、学生のときに文芸評論家の先生が言っていた言葉を思い出した。
 「医者代表の作家や教師代表の作家はいる。でも作家代表の作家はいない」。
 つまり物を書くしか技がなければ生きていけないよ、生き残れないよ、という意味。
 サーカスもたぶん同じで、いくつボールを回せます、とかだけじゃもう駄目で、人より違った素材やプログラムがないと、観る方も「またか」と思ってしまう。
 そういう意味で、座布団は私にとっては新鮮で、海外に出たときの強みにもなるんじゃないかな、と思った。
 衣装の袴姿も様になっていたし。
 あまりお国柄ばかりを押し出すときっと浮いてしまうけれど、少なくともショーはダイナミックで見ごたえがあった。

 他にもいろんな演目があってそれぞれに感想を抱いたけれど、全部は書ききれないので、3つだけ。
 欲を言うと、エンディングで全員が一緒になって見せるアクロバットがなかなか見ごたえがあったので、もうちょっとお互い絡んで欲しかった。ソロ演目ばかりだったし。
 まあそういうのは次に期待しよう。
 日本のサーカス学校、これからが楽しみです。
[[みごと]]
 さて、どこから書こうものか…。
 昨年の夏から今年の夏にかけて、私は異常なほどサーカスを観ている。
 サーカスの卒論を書いていた数年前の比じゃない。まあ、あの頃はお金も時間もなかったからしょうがないとしても、それでもたまに、この一年で観たショーの数を指折り数えてみると、ちょっと我に返って自分でも引く。
 そして結局いつも「いいの、仕事のうちだから」で片付けてる。
 幸せな仕事だ、まったく。

 そしてブログに書いていない感想がまた溜まってきたので、秋の鑑賞ラッシュに入る前にここいらで整理。
 まずは掲題の件、「リトルワールド ワンダー空中サーカス」。
リトルワールドワンダー空中サーカスチケット

 ※チケットはお世話になっているサーカス研究家の方からいただきました。ありがとうございます!


 いつか、犬山のモンキーパークでロシアのイリュージョンショーを観たことは書いた(→リンク)けど、その前日、同じく犬山のリトルワールドにも行ってきた。
 というかその名古屋行き自体がそもそも、リトルワールドのサーカスとモンキーパークのイリュージョンショーが目当てだった。
 日程としては一泊二日の旅で初日がリトルワールド、2日目がモンキーパーク。
 ホテルは名古屋駅近くに取ったものの、2日間とも犬山へ行くという変な旅。
 そしてモンキーと同様、平日昼間のテーマパークに警戒心を少しは抱いていた私は、愛知県に嫁いだ友人を呼びだして、リトルに付き合ってもらった。
 今思えばモンキーの方にこそ付き合ってもらうべきだったと反省している。
 というのも、リトルの方にはそれなりに、客がいたからだ。
 平日の昼間、雨が降りしきる中、という条件はモンキーと変わらないものの、日程を組んでしまってどうしようもないのだろう、修学旅行生らしき小中学生がわらわらといて、寂しい思いはせずに済んだ。

 ちなみにリトルワールドは、世界各国の建造物を再現した、その名の通り小さい世界のようなテーマパーク。
 行く前はなめてかかっていたけれど、展示物はなかなか本格的で、晴れた日にくれば空気も美味しいだろうし、なかなか行けないアフリカや南米などの雰囲気も楽しめちゃう(もちろん欧州も)、お得な施設だ。

 そして肝心のワンダー空中サーカスは、HPによると「ロシア、ウクライナ、ベラルーシから来日した9名のアーティストによる空中サーカス」とのことで、つまり主に空中の技を観られる、エアリアル好きにはたまらないだろうなぁというショーとなっていた。
ワンダー空中サーカス 開演前

 ※開演前はこんな感じ。人がいっぱい。


 以下、手元の備忘録から一部感想を引きぬき。

 ・エアリアルストラップ
 身体にストラップを巻き付け落ちて見せる、など基本はエアリアルシルクと同じに思えるけど男性がやったときの力強さは見もの。

 ・ロシアンバー
 衣装が良い。
 比較的好きな演目だけど、そういえばルナレガーロに行ったときにこの演目にたいそう期待してたら肩すかし食らった。
 けどここに来て、ようやく口直し。ここで観たものの方がダイナミックでのびやか。

 ・バーチアクト
 長い棒を男の人が額や肩に乗せて、その棒の上で女の人が演技する。
 たぶんこれだけの演技を見るのは初めて(クーザのシャリバリに一部あったけど)。
 技はすごいけどシンプル。これはショー全体に通して言える。

 ・エアリアルリング
 トラピスに似ている。
 リングは一般的に女々しい演技が多くあんまり好きな演目じゃなかったけど、ここのは女性ながら雄々しくて楽しめた。

 ・フライングトラピス
 男性のみで3人。下にはエアマットを用意。
 技より何よりも、よくもこんな天井の低いところで、と感心する。
 普通は高いところでやることに感心するのに、こんな面倒そうな所でさえ器具を設置して見せてやろうという意気込みが良い。

 全体を通して思うのは、各演目をもうちょっと観ていたかったという我儘と、素朴だな、という点。
 演出も「技を見せる」以外、そんなに造り込んではいない。
 シルクドゥソレイユが大型スーパーだったら、こっちは「うちは商品の新鮮さと誠実さだけでやってんだ、てやんでい」みたいな個人商店って感じ。
 演目ごとの長さに関しては、リトルワールドへの入場料さえ払えば誰でも観られるショーなので、それを考えたら充分、むしろ贅沢。
 個人的にはお金払ってでも観たいな。

 ただ、途中、宇宙をテーマにしたショーのせいか(?)、火星人みたいな変な着ぐるみが変なダンスを披露していて、ちょっと虫みたいで怖かった…。 
 リトルワールドでは定期的に大道芸フェスとかサーカスショーを開催しているみたいなので、また機会があれば次も行こう。そうしよう。
 できれば休日に。
[[みごと]]