8週目:ネウボラ初回訪問

ネウボラは我が家から徒歩15分ほどの所にあった。
風邪などを引いたら最初に行く地域の保健センター(terveysasema)と同じビルにあり、つわりでバスなんかに乗る余裕がなくなっていた身にはこれは本当に助かった。

保健センターもそうだが、日本の病院のように受付はないので、予約していた時間に待合室で待機するだけである。
夫と共に待っているとすぐに名前を呼ばれた。
私を、というか我が家を担当してくれることになったのは50歳前後のベテラン看護師(以下ネウボラおばさん)で、いい人そうでまずはひと安心。なんせこれから何年も付き合うことになるのだ、万が一相性が悪いとなかなか辛い。
個室に入って話を始めると、まずはおめでとう、と電話でも言われたのに改めて祝福される。「妊娠というのは素晴らしい奇跡なのよ」と、毎日飽きるほど妊婦を相手にしているであろう人にキラキラした目で言われると、ネウボラってすごいなぁと感心せざるを得なかった。その言葉に嘘くささはなく、本当に国をあげて子育てを支援してくれている気配を感じる。
それからすぐに本題に入るのかと思えば、私たち夫婦がどうやって出会ったのかとか、一緒になってどれぐらいか、結婚したのはいつかなど、まずはじっくり馴れ初めを聞かれた。単なる興味本位の雑談かと思えばそうでもなく、今後もフィンランドに住むのかどうか、など我が家の人生設計に関わってくる質問もあり、家族カウンセリングみたいだなぁという印象を受けた。

というのもネウボラへ行く前、インターネットから問診票のようなものに入力する必要があった。
その内容は主に生活習慣についてで、酒は飲むのか、タバコは、ドラッグは、という質問から、運動はどのぐらいしているのかや過去の病歴、感染歴、家族の病歴などについてだった。
そしてそれに答える必要があったのは妊娠した私だけでなく夫もで、生まれてくる子供のことを考えたら当然なのだが、この家族がどういう人たちで本当に子供を迎える体制が整っているのかネウボラによって審査されているようだった。
審査というと若干聞こえが悪いが、例えばもしうちがシングルマザーだったり夫にアルコールの問題があったりすると、子供を育てるにはそれだけ負担がかかるし、金銭的・物理的に別途支援が受けられたりする。子供を夫婦で育てるのは当たり前、という前提なので、日本のように母親だけが産婦人科へ通って全て完結するということはなく、家族全体でネウボラのお世話になっていいのだと私の場合は安心できた。

一通り雑談が終わると、ネットで入力した問診票を眺めながら改めて生活習慣の確認と、夫は別口でアルコールに関する詳しい質問票(週にどのぐらいの頻度で飲むのかなど)を記入した。これはアルコールの問題がこの国でとてもメジャーなせいだろう。
以下は初回訪問で聞かれたこと、話したことのメモだが、

・今どう感じるか
 素直におなかがすくと気持ち悪いですと答える。普通のことよ、と軽く言われ安心。
・ふたりはどうやって出会ったか
・一緒にいてどのぐらいになるのか
・結婚したのはいつか
・今後もフィンランドに住むのか
・家はどんな構造か。子供を迎える準備はできているか
・身近に子供はいるのか。兄弟の子供は。ベビーシッター経験は
・それぞれの両親はどこに住んでいるのか
・趣味はなに
 英語で「What’s your hobby?」と聞かれたので食べることと料理、と素直に答えると笑われる。スポーツについてという意味だったらしい。自転車とたまの散歩と答える。

・酒の習慣について(夫はフォームにどれぐらいの頻度で飲むのかなど入力)
・タバコ、ドラッグについても同様。しかしふたりとも一切やらないので無問題。

・食べ物について
 数枚に渡る用紙を渡される。生ものはだめ、とか事前に調べていたものだけど細やかな指導。
 面白いのはサルミアッキとリコリスだめ、という記入。いやいや、食べませんけども。すごくフィンランドらしい。
・料理や食生活について
 日本食を食べてるの?と聞かれ、フィンランド料理も中華もイタリアンもなんでも作ります、料理好きなのでと答える。夫も料理ができると聞いてネウボラおばさん安心。子供ができると毎日料理するのはとても大事なことよと教えられる。
・カルシウムについて
 牛乳を7dl飲みなさい、と言われ驚く。ほぼ1パックじゃないですか!とびっくり。
 牛乳無理ならピーマ(酸っぱい乳酸飲料)でもスムージーでもいいとのこと。もしくはカルシウムのタブレット。
・その他サプリについて
 葉酸も大事だけどビタミンDについてサプリを飲むよう指導。冬期の日照時間が短いため。これもすごくフィンランドっぽい。

・体重チェックと血圧チェック
 これが唯一の、医療機関らしいチェック項目。

・翌週からの旅行について質問
 9週目から10日ほどドバイとオマーンに旅行する予定があった。
 日本だったら何に関しても「万が一何かあったら」でお薦めされないけれど、ここでは無問題。日光たくさん浴びれていいわね、ぜひ行ってきなさいよ、と歓迎ムード。妊娠中期に入っていた小旅行予定も問題なし。結局私は妊娠中、5、6回ほど海外に渡ることになる。これについては後述、「妊娠中の旅行について」。

・体重について質問
 どのぐらい増えていいのか、と聞くと、人によっては25キロと言われ驚く。日本では7−10キロと細かく厳しく指導されるが、これも驚くと同時に安堵。いつから増やせばいいのか、については正常に食べられるようになってから、と大まかな答え。食べたいものを、指導に沿って健康的に食べていれば大丈夫、と言われる。いろいろ日本に比べたらラフだけど気持ちはすごく楽。

・今後のスケジュールについて
 13週目のエコー検査に、医者診察、別途ラボでの採血、尿検査。その結果を交えて14週目に同じネウボラおばさんとの面談の予定を入れる。

最後にフィンランド版母子手帳的をもらい、一時間ちょっとの面談は終わった。そうだ、これは病院の診察というよりは面談だった。
尿検査さえなく、本当に妊娠しているのかという疑問は相変わらず残ったままだが、ネウボラおばさんは「家での妊娠検査薬の結果を信じて大丈夫よ」と穏やかに微笑んだだけだった。実はその妊娠検査薬、日本から持ってきたやつで外装箱を保存してなかった故に使用期限がわからないまま使ったという間抜けな状況だったのだけれど。
でもまあつわりはしっかり過ぎるほど来ているし、全体的に日本と比べて大雑把な感じに私は不安を覚えるよりも安堵した。自分自身大雑把だし、何だか気楽に妊娠生活が送れそう、と。
これが日本で妊娠・出産を経験したのちの第二子とかなら「日本みたいに手厚くない!」などとイライラしまた状況は違っていたのだろうけど、私の場合はなんせ何の知識もない初心者妊婦だったので、そういうものかとそのまま受け入れることにした。エコーが2回しかない件についても慣れた。2回でいいじゃん別に、とどんと構えることにした。
それでもまあ、日本の友人たちにフィンランドの妊娠出産事情を話すとやはりかなり驚かれるので、どうぞ驚いてくださいと言わんばかりに記録を残している次第である。
どっちがいいとかじゃないんだけどね。

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