フィンランドの病院に行ってきたよ!のお話

もうだいぶ前、年明けの話になってしまいますが、フィンランドの病院に「初詣」してきました。

引っ越して間もない頃は観光ビザで入国して旅行保険しかなかったし、結婚後にあっさり滞在ビザが下りてからも所詮は無職、お金のかかる病院には本当に緊急のとき、重病のときしかいかないんだろうなぁとなんとなく思っていました。
というのも、ロンドンに住んでいる人生の先輩がいうには、いわゆる町医者の予約はすごく取りにくくて、私設病院ならすぐに行けるけど、ものすごくお金がかかるとのこと。
フィンランドのシステムも似たようなものだし、まあはっきり言うと病院という存在にガクブルしてたんですね。すんごい根気か、もしくはお金かのどっちかが必要なのだと。
もともと日本にいたときから滅多に病院にいかなかったし、唯一頻繁に通っていた皮膚科も、フィンランドに来てからはアトピーが軽くなったし、ものすごく幸運なことに夫の伯母が元皮膚科医ということで処方箋が必要な薬も病院にいくことなく処方してもらっていました。

なのでこんなに早く病院のお世話になるとは思ってもいませんでした。

簡単にフィンランドの病院の仕組みを説明しておきます。
まず、行くには予約が必要。飛び込み診療は救急車レベルでしか許されていません。
で、電話予約が取れたら行く先は「病院=ホスピタル」ではなく直訳「健康センター」と呼ばれる町医者です。
何が違うのかって言うと、フィンランドでホスピタルというのは基本、入院できる設備が整ったのことを指すらしく、うっかり「ホスピタル行ってきたー」と言おうものなら「え!どこが悪いの!?」とぎょっとされます。逆に「健康センター」は各地域にあり誰でも訪れる、日本で言えば「診療所」のこと。
歯医者は別になってしまいますが(※後述します)、健康センターに行けば大抵見てもらいます。
そこで解決できない場合は、改めてホスピタルの専門医に診てもらえる、そういう仕組みになっています。
つまり電話予約→健康センターで診療→必要があれば専門医へ、こんな流れです。
が、そんな回りくどい方法取れないよ!今すぐ診てもらいたい!という場合は私立病院へ行くのも一つの手です。
そこは基本的に健康保険が効かないので、自腹になってしまいます。

なので私はずっと私立病院というのは「お金持ちのひとびと」が行くきらびやかな場所だと思っていました。
しかし、夫が何故かちょくちょく行ってるんです。私立病院。
夫「明日病院いくことにした」
私「え、今から予約取れるの?」
夫「私立だから大丈夫」
そんな感じで気軽に。
アンタいつからそんなセレブになっちゃったの!?と初めはびっくりしましたが、実は福利厚生の一環で、夫の会社に提携しているプライベートドクターがいるのだとか。
なので単なる風邪でもなんでもそこに行けばさくっと診てもらえるし、無料だし、会社と裏で繋がっているので病気休暇の申請も簡単に出せるといいことずくめ。

しかしそんな恩恵は私には回ってこず(日本と違って配偶者検診とか扶養という制度がまずない)、私が予約することになったのは健康センターの方でした。……どうでもいいけどこのセンターという直訳、なんだあおばあちゃんたちが集う公民館付属のジムみたいだね。
なんで行く羽目になったかというと、もうこれは本当に間抜けな理由。

巻き爪になったのです。

ええ巻き爪ですよ、巻き爪。爪のはしっこが皮膚に食い込んで痛くなるアレ。
もともと両足若干巻き爪気味ではあったものの、爪を切るときにしっかりケアしてれば大丈夫な程度でした。
が、寒さがたたったのか、クリスマス前に急いで爪を切ったのがいけなかったのか、クリスマスを夫の実家で過ごしていた頃には「あ…なんか足の爪痛い」となり、しかし普段使っている爪切りを持っていなかったので、しかたなく手持ちのガラスの爪やすりをつかって処置。
それもおして夫の地元を歩きまわっていたら、爪をかばって変な歩き方をしているせいか脚も痛くなるし、5泊のクリスマス休暇から自宅に戻ってきたときには、患部が腫れて真っ赤な状態に。
急いでいつもの道具で処置をして放置してみたものの、良くなる気配がなく、年を越してからは赤かった幹部が紫色になる始末。
そこで薬局で買ってきた塗り薬を塗って、薦められたフットバスを朝晩して様子をみたものの、紫色から化膿しだして黄色、もうなにがなんだかのカラーフェスティバル状態。
仕方なく、日本で言う「お正月休み開け」の月曜日に朝一番で健康センターの予約を入れてもらうことになりました。

情けなくも電話予約は夫に丸投げしたんですが、よりによって一年で一番予約が取りにくいであろう日に電話してもすぐ予約取れないだろうなぁと諦めていました。
もしくは取れても遠い病院に回されるのだろう、と。
というのも健康センターは市内であればどこでも訪れることができるので、近くに空きがなければ場合によっては片道一時間かけて、バスや電車をのりついで行かなければいけません。
が、予約の電話を終えた夫にどうだった?どこになった?と聞くと、
「10時半にすぐそこの予約取れたよ」
と誇らしげな様子。
すぐそこの、というのは私たちが住んでいるのと同じ小島にある唯一の健康センター。徒歩10分程度。
いつの予約をとれるかはどれだけ緊急かにかかっているので、もう2週間以上もこの状態だと伝えたところ、じゃあ今日で、とあっさり通ったようです。
ちなみに同じ地域の病院が取れたのはある意味奇跡で、ある意味必然。
というのも私たちが住んでいるエリアは海水浴場がある離れ小島で、シティセンターほどごみごみしていない、かといってヘルシンキのはずれでありながら反対側のはずれみたいに治安が悪くない、まあはっきり言ってしまえば移民がごく少ないエリアなのです。
ショッピングセンターもなく(今作ってるけど)、メトロも通っておらず(これも今作ってる)、なのでわざわざこんなはずれにある健康センターによそから来よういう人も少なく、それで予約が取れたのだと推測します。
しかし10時半の予約というのは、つまり2時間後。急いで支度して行ってきました。

うちの地域にある健康センターは、小さい町医者サイズを想像していましたが、実際は学校の校舎ぐらいのサイズでした。
予約のときにあらかじめ伝えられた待合室へ行き、ただそこで待ちます。受付も、問診表の記載もなにもありません。
そして名前が呼ばれたのはほぼ予約の時刻通り。
驚いたことに診察室の中から出て来て私の名(苗字)を呼んだのは、ドクター本人でした。
そして診察室の中にはドクター一人だけ。看護師も医療事務も誰もいません。
ありがたいことに英語で対応してくださったので、症状を説明して患部を見せて、化膿止めの飲み薬を処方してもらっておしまい。5分もかかりませんでした。
処方箋は電子データで私の健康保険証のデータに紐付けられていて、ドクターや薬剤師ならいつでも見られるようになっています。
つまり薬の組み合わせとかも向こうで勝手にチェックして考えてくれる、お薬手帳の役割も果たしてます。
それだけじゃなく過去によそでやった検査なんかもわかるので、自分でいちから説明する必要がありません。
一応紙の処方箋も貰ったけど、受付を通すのではなくドクターがその場でプリントアウトしてくれました。
診察室から出たらあとは薬局にいって、薬剤師に保険証(カード型)を見せたら薬が出て来て購入しただけでした。超簡単!
あれ?じゃあ病院のお金はどこで払うの?と疑問に思い夫に聞くと、後日自宅に請求書が送られてくるとのこと。
しかし数日待っても来ません。
もしかして私踏み倒しちゃったんじゃ、と心配になって調べると、ヘルシンキの健康センターは全部タダだそうで、これまたびっくり。
隣の市はちょっとお金かかります。が、それも1000円以下ぐらい。
さすが高い税金払ってるだけあるわと、夫婦揃って改めてこの国の制度に感心しました。
(夫がタダって知らなかったのもちょっと間抜けですがw)

その後、実は歯医者にも行ってきました。
これは急ぎではなく単なる歯科検診目当てだったので、近場ならいつでもいいよ、と予約したらひとつき待ち。
また別の、チャリで20分くらいの距離の健康センター内にある歯科部門にいくと、廊下にモニターとバーコードリーダーがあり、そこに保険証のバーコードをかざす仕組みになっています。
ぴっとすると、画面上に「13番のドアの前でお待ち下さい」と表示され、それで私が到着したことが診療室に伝わるのか、ドア横の椅子に座って待っているとすぐに歯科衛生士が出て来て私の名を呼びました。
そして診察室内は歯科衛生士と歯科医の2人のみ。
私の顔は明らかなガイジン顔なので、衛生士が優しくも「英語とフィンランド語どっちがいい?」と聞いてくれたものの、すかさず「英語で!」と答えると「おおう、OK、がんばる。。。」と相手も及び腰(笑)。
結局英語とフィンランド語を交えながら、特にちょっと年輩の歯科医が英語がほぼできなかったので、私のへたへたフィンランド語で応戦しながら、無事に「虫歯なし!問題なし!」、レントゲンまでご丁寧にとり、診察を終えました。
(フィンランドは教育水準が高いのでみんな英語がしゃべれます。。。ということになっていますが、実はその教育が始まったのもほんの数十年前なので、私の親世代の方は意外と話せなかったりします。)
診察を終えたら前回の健康センター同様、支払いも何もせず診察室からまっすぐ帰って来ました。歯医者についてはお金がかかるので、あとから自宅に請求書が送られてくる仕組みのようです。
そういえば歯科チェックついでに歯科検診とは別に歯の心配ごとがあったので相談すると、「それについては私立歯科医に行ってね、予約方法の紙は家に送ってあげるから」と言われてしまい、ずーんと落ち込みました。
が、後日自宅に送られてきた書類に目を通すと、私立歯科医で使えるクーポンが同封されていました。ついでに私の歯のデータが入ったCR-ROMも。
そのクーポンはヘルシンキがここ数年始めた新しい制度のようで、私立病院であっても紹介状があれば全額負担する必要がなく、日本と同じぐらいの値段で診察が受けられるようです。
誰でも必要ではないけれどあるといい治療(たとえば歯科医でいうと歯の矯正なんかかな?)は自治体が何割か負担してくれます。
なんだ私立も馬鹿高いわけじゃないんだ!とすっかり病院に対する私の中のハードルが下がりました。
ちなみにリアルな病院、英語で「ホスピタル」の方も、クリスマス時期にこっそり訪問していました。
こちらは義母がナースなので、従業員用の食堂に紛れ込ませてもらったという話。
病院食というといまいちなイメージしかなかったのですが、さすがはフィンランド、普通のカフェテリアのランチバフェなみで、数種類のパン、ジュースや牛乳から始まり、サラダにクリームの中で焼いたサーモンやらクリスマス時期限定のキャセロール料理、もちろん食後のコーヒーとデザートまでフルコース。
何気に楽しみにしていたナースの制服もネイビーブルーと、いろいろ日本とは勝手が違い、食後の地下室探検なんかも含めて楽しませてもらいまいした。
たぶんいつか入院するはめになっても、フィンランドでの入院もそんなに怖くないはず。うん。

そんな一連の病院訪問を通して思ったのは、このフィンランドの医療制度、地味なようでものすごく画期的で、タダなのももちろんありがたいけれど、受付や医療事務やアシスタントをすっ飛ばしていきなり診察ということで患者は時間短縮できるし病院側も人件費削減できるしで、心の底から感心しました。
予約制も一見面倒なようではあるけど、例えば日本の待合室みたいに風邪っぴきがたくさんいる中で数時間待たされる、なんてこともなくて衛生的だし、なにより体調悪い時にずっと外出状態が続くこともなくてかえって健康にはいい気がします。
こちらでは物価や税金が高く、そのイメージばかりが日本では独り歩きしていますが、病院や学校にお金かからないし市のカルチャーセンターでの学習費も日本に比べたらずーーーっと安いし、いま話題の待機児童ももちろんいないし、きちんと税金が使われているなぁと感謝するばかりです。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です